ペーパースカイ【完結】
「あ。信号、青」

軽くあたしの背中を押して、促しながら幸太が言った。

「で?なんだったの、さっきのメール」

信号を渡ってから、あたし達は再び立ち止まった。

「あのね、…輪子のパパからのメールだったの」

「ん」

「輪子ね、今、熱出して寝込んでるんだって…輪子パパは、帰り急いでも

十一時くらいになっちゃうらしくて」

「…ん」

「苺ちゃん、よかったら輪子に顔見せに行ってあげて…って…」

「はぁ!?なにそれ?なんでそんなん苺に頼むんだよ」

ピリッ。

幸太の言葉に、またちょっと電気が走った。

「だって…言ったでしょ?輪子んちのママが亡くなって、

今は父娘二人だけだって」

「それは聞いたけど…だから?なんなの?」

幸太がイライラしながら、あたしの次の言葉を急かす。

「…だって!熱出して寝てるなら、ご飯もきっとろくに食べれてないだろうし!

…あたしの家は、輪子の家からそう遠くもないし…」

それに。

「それに、…輪子は、あたしの親友だから。…心配なんだもん!!」

「…んだよ、それ…メールか電話でもすりゃ、それで充分なんじゃねーの?」

歩行者を避けて、あたし達はいつの間にか道の端っこに立っていた。
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