金色の師弟

そのライラが、わざわざこの地へやってくる。

何もないわけがない。

「あの男は、頭がいい。……そうだな、アデルの頭の良さを賢いとか抜け目がないと表現するなら、ライラは純粋に頭がいいんだ」

先を見通す力に長けている。
まるで、占い師のように。

エルクがそう告げると、アデルは肩を竦めた。

「洞察力がずば抜けているのなら、占い師以上ですよ」

「そうだ。だから、何かが起こる」

エルクは再び文章の上に指を滑らせる。

「デモンドにも被害……か」

不意に現れた他国の名に、エルクの指は止まる。

イアンからの隠されたメッセージは、ライラが何かに気付いたからそちらに送る。

では、何に気付いたか。

「デモンドに何かあるということか……」

エルクは、自分の読取りに確信を持った。

イアンやエルクが守るのは、オネストのみである。

デモンドに被害が出ようが出まいが、関係はない。

それなのに、イアンはあえてその名を書いた。

デモンドに気を付けろ。

……そう言いたいのだろう。
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