金色の師弟

エルクの呟きを聞き逃さず、アデルはエルクにのみ聞こえるような声を出す。

「今回の山賊の一件に、デモンドが絡んでいると考えているのでしょうか」

「おそらくな。……しかし、デモンド王国か」

デモンドと接していないシェーダは、他の二国に比べて得ている情報が少ない。

今から対策を練ろうにも、わからないことのほうが圧倒的に多い。

ため息を吐くエルク。

普段は真っ直ぐな黒い瞳には、疲労が窺えた。

対称的に、隣に立つアデルの瞳からは、感情が窺えない。

何を考えているのか掴めない瞳で、じっと書状を見つめていた。

「ライラが来るなら、出発はメルディを待ってからだな」

「一小隊なら、そう日数もかからないでしょうね」

アデルが頷いたことを確認すると、エルクは広げていた書状を丁寧に畳み直した。
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