金色の師弟
歩くペースは変えずに、ノルンは目を伏せた。
「ねぇ、アデル。私の家は、どうあっても貴方と婚姻を結ばせたいようだわ」
「……そうか」
「浮いた噂がいくつかあるのは耳に入っているようだけど、貴方、手は出しても種は付けないでしょう?だから、ただ相手のお嬢さんが舞い上がり噂を流しているって考えているようなの」
ここ最近は、その好色も目立ってないようだけど、とノルンは微笑を浮かべて付け加えた。
吐息混じりの言葉に、アデルも疲れたような溜め息を吐く。
ノルンの肩に置いていた手を離すと、隣へと移り足を並べた。
困った顔をしたアデルを見上げ、ノルンはからかい混じりに肩を竦めた。
「なんなら、既成事実まで作ってくれたら破談になるかもね」
「お前……それはさすがに」
「冗談。……ごめんなさいね」
そっと目を伏せるノルン。
長い睫毛が薄明かりで頬に影を落とす。
婚約の話がアデルに負担を掛けているのではないかと憂いているのだ。
アデルは丁寧な手つきで、ノルンの頬を撫でた。