金色の師弟

唐突に伸びてきた優しい手に、一瞬目を丸くしたノルンは、すぐに苦笑を浮かべた。

ノルンは頬に触れているアデルの手を退かしながら、八の字になった眉で困惑気味に彼を見上げた。

「さらっとそういうことしちゃうから、みんなその気になっちゃうのよ」

ノルンの言葉に、アデルは意地の悪い笑みを浮かべた。

「残念。今のは計算だ」

「……ほんっとに質悪い」

ノルンは眉間にしわを寄せ、見せ付けるように長々と溜め息を吐く。

そして、人差し指をアデルの目の前に突き立てた。

「そんなことばかり考えていると、いつか本命ができた時に、信じてもらえなくなるわよ」

痛いところを付かれ、アデルは肩を竦める。

その姿に、ノルンは目を丸くした。

「……貴方、本命がいるの?」

アデルは答えない。

答える代わりに、ノルンと目を合わせ微笑んでみせた。
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