金色の師弟

はっきりとは答えなかったが、本命の存在を匂わせるアデルに、ノルンは足を止め固まってしまった。

(アデルが恋に落ちるなんて、天変地異の前触れかしら)

ノルンを気にせず歩き続けるアデルと距離が開き、慌ててノルンは駆け寄った。

アデルの腕を掴み、耳元に口を寄せる。

興奮した声を抑え、囁くように尋ねた。

「本当なの?アデルが?どんな子?」

ノルンには、正直信じられなかった。

いつも飄々としていて、甘い言葉も愛想笑いと同じ感覚で振りまいていたアデルが、恋をしている。

そんな面白い話、聞かずにはいられない。

「真っ直ぐな奴だ」

「…………え?それだけなの?」

「あぁ」

それ以上語ることはない、とでも言うように、アデルの横顔はあっさりとしていた。

ノルンは腕に絡み付いたまま、次の質問を考える。

まるでじゃれ合う恋人たちのようであったが、本人達は気付いていない。
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