金色の師弟
ノルンの恋の相手は、城下町の花屋で働く青年だった。
城からの依頼で時折花を生けにやってくる。
その手伝いとしてやってきた青年と、少しずつ惹かれ合い今では相思相愛の仲になっている。
「仕方ないじゃない。なんて声を掛ければいいかわからないもの」
……と、アデルは思うのだが、どうやらノルンは青年の気持ちに気付けていないらしい。
愛馬に跨り、剣を手に戦場を駆ける姿は性別を越えて勇ましいが、恋愛が絡めば勇敢な女戦士もただの娘。
微笑ましさに頬を緩めたアデルの脳裏に浮かぶのは、ちょっとした一言で顔を真っ赤にするルイの姿。
ルイに向ける言葉に偽りはないのだが、彼女はどうにも受け取ってくれない。
それは自分の日頃の行いのせいでもあるのだが。
(まぁ、今はそれでもいいか)
弟子をからかって遊んでいる。
そんな関係も、楽しい。
今のアデルは、このままでも満足していた。
ルイがいる。
それだけのことで。
(だが、いつまでも満足はしていないぞ)
遅かれ早かれ、そばにいるだけでは物足りなくなってくるだろう。
恋に溺れた自分がどうするか。
アデルには、見当も付かなかった。