金色の師弟

凄い、という言葉にルイは首を振る。

「私なんてまだまだです。もっと身につけないといけないものも多いですし……」

「女らしさとか、か?」

茶化すような声が飛び込んできたことで、ルイはアデルを振り返り唇を尖らせた。

「真剣に話しているのに、邪魔しないでください!」

ルイは、自分自身の実力に気付けていない。

だが、今はそれでいいのかとノルンは思った。

だから彼女は、強くなれるのだと。

ノルンは、ルイをからかうアデルへと視線を向けた。

自分に見せるような、どこか一線を引いた笑顔とは違う、自然な表情に思わず息を呑む。

普段の含み笑いなんかより、ずっと魅力的な笑顔がそこにあった。

(……この子が)

いつぞや話した相手がルイであることに、ノルンは気付く。

その理由もわかる。

人に囲まれても独りだったアデルの一番近くまでやってきたのは、彼女だけだ。
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