金色の師弟
弓の腕は超一流だが、少々性格に難のあるこの師匠には心配させられる。
眉をしかめ自分を見つめる弟子の頭を、アデルはくしゃくしゃと掻き乱す。
「ちょ、ちょっと……!」
「お前はもう少し女としての修行が必要かもしれないな」
非難するルイの言葉は無視し、アデルは微笑を浮かべた。
修行ばかりでろくに恋愛もしてこなかったルイは、その言葉で不安げにアデルを見上げた。
「やはり、今まで一度も恋をしてきてないのはおかしいでしょうか?」
真面目な性格のルイは、アデルの言葉を思った以上に真剣に受けとめていたらしい。
本当に可愛い奴だ、と心の中で呟きながら、アデルはルイの頭の天辺に軽い口付けを落とす。
「ルイはそのままでいいさ。恋にだって、そのうち落ちるだろう」
一瞬だけの口付けで、ルイはそれがアデルからのキスだとは気付けなかった。
何かが触れた感覚に自分のつむじを押さえると、アデルが小さく笑う。
「葉っぱがついていたんだ」
「え?あ、ありがとうございました」
笑顔を浮かべ頭を下げるルイには聞こえないように、アデルは呟いた。
「……俺に落ちればいいんだがな」
顔を上げたルイの頭を再び撫でて、寄宿舎へ戻るように優しく背中を押すアデルの横顔は、誰もが目を奪われるほどに綺麗であった。