金色の師弟

ルイはゆっくりと目蓋を下ろす。

五感のうちの視覚を閉ざしたことで、肌は敏感に外気を感じ取り、冷たさが増したような気がした。

(結局、アデルさんに見せてないなぁ……)

見よう見真似で習得したアデルの技を見てもらおうと思っていた。

けれどルイの心は、それどころではなかった。

忘れもしない。
優しく微笑む美しい女性を。

アデルと仲睦まじく談笑をしていたノルンの姿を思い出すことは、ルイにとっては弓を引くより容易い。

アデルの婚約者と会ったのは、初めてだった。

綺麗で、意志の強そうな人。

素敵な人だと、ルイは素直に思った。

(アデルさんの婚約者がノルンさんでよかった)

ルイは安心していた。

ノルンなら、アデルをちゃんと見てくれる、と。

家柄や容姿や実力のような上辺だけではなくて、中身もちゃんとわかってくれる人だと思った。

それは、確かに嬉しいことなのに。

ルイの心は、得体の知れないもやもやに覆われていた。
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