金色の師弟
「や、約束ですよ!」
「あぁ」
一瞬だとしても、裸を見られてしまった恥ずかしさから、ルイは声を荒げた。
朝日の照らす薄い霧と静けさに包まれた泉の中、ルイの声は予想外に大きく響いた。
しかし、それ以上に煩いものは、ルイ自身の心音。
アデルの腕に抱かれていることに、心臓が騒いでいる。
裸を見られた恥ずかしさとは色の違う、どこか嬉しい恥ずかしさの由来はアデルに抱かれていること。
気付いて、ルイは強く目をつむり頭をアデルの胸に押し当てた。
心臓が破裂する程の緊張を味わうのは初めてだった。
同時に感じる安心感。
助かったことに対する安心感ではない。
アデルの腕の中にいることが、ルイに絶対的な安心感を与えているのだ。
(私……)
ここ最近、ルイを支配していたもやもやの理由がわかった。
ノルンという婚約者にショックを受けていたことも、納得がいく。
(そうか……私……)
アデルには気付かれないように、ルイは彼を盗み見た。
しっかりと抱き抱える腕が温かい。
(私、ずっとアデルさんに惹かれていたんだ)
それはとても、単純な答えだった。