金色の師弟
部下からの信頼も厚いアデルが一人で食事をしているのが珍しい。
ルイはからかいを含んだ笑みを浮かべ、首を傾げた。
「もしかして、部下の恋人にでも手を出して、嫌われちゃいましたか?」
「馬鹿言え。俺は男がいるような女は御免だ」
アデルは薄い微笑を浮かべた。
そこにからかわれた不快感などなく、可愛い妹の悪戯を見守るような空気がある。
カトルはルイの一声にハラハラとしていたが、アデルの表情が思いの外優しかったため、安心して食事を始めた。
「お前たちがまだ来てないようだったから、空けておいたんだよ」
「そうなのですか?」
ルイもカトルもその言葉は予想外だったため、食事の手が止まる。
「アデル将軍、すいません。俺にまで気を遣っていただいて……」
「気にするな。今日中に発つから最後くらいはのんびり話すのもいいかと思っただけだ」
切れ長の瞳を細め微笑する様は、同性のカトルでも見惚れてしまいそうな程に整っていた。
この容姿で手取り足取り教えられ、ルイはどうして恋に落ちないのか。
それがカトルには疑問だ。