金色の師弟
思いもしなかったライラの装備に呆気に取られている二人など気にせず、ライラは素早く小さな小箱を手に取った。
頭を使うことを得意とする彼は、薬学にも長けており薬の調合は朝飯前だ。
手にした小箱の安全装置に指を掛け、ライラはくるりと体の向きを変えた。
「走るぞ」
安全装置を引き抜く。
箱の中で上下に分かれていた薬品たちが交ざり合う。
間髪置かず、ライラは自身の全力を持って小箱を賊の頭上にそびえる崖へと投げ付けた。
小箱が手から離れると同時に、ライラは箱の行方など気にせずに走りだす。
ライラは二人の背を押しながら、足を速めた。
その時、だった。
耳を貫く爆発音。
崖にぶつかった小箱が小爆発を起こす。
小箱の中の薬品が化学変化を起こしたのだった。
大砲を発射したような音に身体を震わせた山賊たち。
しかし、爆発が音の割に小規模であったことと、森ではなく頭上で起きたことで、安心したような笑みを浮かべた。
だが、走り去るライラは足を止めない。
次の瞬間、爆発の音とは違う、地面が呻くような音がした。