金色の師弟
境界線崩壊
地鳴りも止み、雨粒が地面を叩く音だけが響くようになった。
「終わった……?」
ぽつりと一人の兵が呟く。
兵士はそのまま、腰が抜けた様に水溜まりの中に座り込んだ。
跳ねた泥水が隣の兵の足を濡らしたが、そんなことは両者共に気にもならないらしく、ただ崩れた崖を見つめていた。
「終わったぁ……!」
「やったあぁ……」
想定外の事態。
先に進んだ前衛部隊に、予定より多い山賊。
周囲を囲まれじりじりと追い詰められながら戦うというのは、兵たちに相当な精神的負担を掛けていただろう。
一人が座り込むと、張り詰めていた空気は一瞬で解け、崩れ、緩む。
だらしない笑みを浮かべ座り込む隊員を見つめ、アデルは微かに目を細めた。
叱咤するのは簡単であったが、彼らの気持ちもわからないでもない。
今はあえて、気の緩む部下たちを黙認することにした。