金色の師弟

とりあえずは、進もう。

止まっているよりはマシだろう。

アデルは指示を飛ばすために顔を上げた。

その時、アデルから目を逸らしていたルイは、薄暗い森の木々の中に、蠢く影を見つけた。

「皆、今から……」

「アデルさん、生き残りが!」

アデルの号令はルイの叫び声に遮られた。

「ちっ」

ルイの視線の先、森の中から一人の男が飛び出してくる。

アデルもライラも、土砂崩れで賊は全員が飲み込まれたと思っていた。

しかし崖とは反対側の森に潜み、ライラの声で同時にあの場から逃げ出した者が一人いた。

そしてその男はずっと様子を窺っていたのだ。

土砂崩れが収まり、アデルたちが油断するときを、ひっそりと狙いながら。

「こうなれば、道連れだ!!」

男は細身の剣を手に、真っ直ぐにアデルとライラの元へと向かっていく。
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