金色の師弟

初めはアデルを狙っていた男であった。

しかし、目の前に新しい標的、しかも女が現われたことで狙いを変える。

下卑た笑みを浮かべると、男は森へと逃げ込んだルイの背中を追いかけた。

その笑みには、女のほうが仕留めやすいと思ったことと、無理矢理ルイを襲ってやろうという思考が反映されていた。

敵を引き付け走りだしたルイへと、アデルは悲鳴に近い声を上げる。

「ルイ!戻れ!そっちは危ない!!」

急に斜面がきつくなっている森は、現在雨で足元もぬかるんでいる。

嫌な予感に、アデルは目の前の水溜まりを避けてルイの後を追い走りだした。

「他の生き残りに注意して待機!」

ライラは他の隊員に素早く命じ、アデルに続く。

誰が悪いわけでもない。

だが、自分がルイを危険な目に合わせてしまったことは事実。

(ルイ……!)

彼女の無事を強く祈りながら、ライラは拳を握り締めた。
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