金色の師弟
同時に、ルイも焦る。
小さくダメージを重ねても、致命的な一撃は何も与えられていないのだ。
更に、足元は緩く斜面になっていて、雨によるぬかるみのせいで踏ん張りが効かない。
下手には踏み込めず、男の突きをかわしながら小さな反撃を積み重ねるしか出来ることがなかった。
顔へと迫る男の剣先。
ルイは上半身を動かすことでかわし、短剣を持つ手を伸ばして男の手の甲の肉を薄く抉る。
リーチでは負けているが、ルイの方が小回りは効く。
(埒が明かない……)
焦るべきではないとわかっていながらも、決着の付かない切り合いにルイの心は急かされる。
打ち付ける雨にもまた、急がねばならないような気になる。
冷たい雨で身体を打たれ続け、少しずつ身体が震え始めていた。
体力が奪われている事実に、ルイは奥歯を噛み締めた。