金色の師弟
ルイは……悔しかった。
あいつなら大丈夫だ、とアデルに思ってもらえなかったことがどうしようもなく辛かったのだ。
二人の存在に焦った男が、大きく剣を振り上げる。
細やかだった今までとは違い大振りな一撃に、ルイは小さく微笑んだ。
振り上げる瞬間にルイは懐に飛び込むと、剣を握る男の右手に柄まで短剣を突き刺した。
「ぐ、あぁ!!」
深々と刺さった刃物は筋肉の筋を切り、男は手にしていた剣を握れずに落とした。
ルイは男の後ろを確認する。
今いる場が緩い坂道となっている。
つまり、あと少しで地面は急斜面に変わるということ。
ルイは身体の前で両腕を交差させると、身を低くし迷わず男の身体にぶつかった。
斜面の下へと突き落とすつもりだ。
痛みに支配された身体、ぬかるむ足元、低い位置に体当たりを食らい、ぐらりと男の身体が傾く。
(このまま、落ちろ……!)
ルイはぶつかった反動を利用し下がろうとした。
が、足元は泥。
反動で下がった身体を支える足は踏張りが効かず、反動の勢いのままルイは男の目の前で尻餅を付いた。