金色の師弟
すぐに後を追おうと斜面へ向かったアデルを、ライラが後ろから羽交い締めにした。
「離せ!」
「待て、落ち着け!」
「落ち着いていられるか!」
いつでも冷静で飄々としている切れ者。
それがライラの中でのアデルの評価。
「離せ、ライラ!」
だが、冷静も飄々もルイのためなら呆気なく姿を消す。
強引に拘束から逃れようと暴れるアデルを、騎士でもないライラには抑えきれなかった。
アデルが力付くで右半身を捩り、ライラの腕から身体を抜く。
そして、進むことを躊躇いたくなる斜面へと駆けた。
「お前は部隊を率いて先に山を下れ。必ずあいつを連れ帰る!」
振り返らず、前だけを見据えアデルは言い放った。
そして斜面に差し掛かると手近な木に捕まりながら、決して慎重とは思えないペースで下っていく。
ライラは、その場に力なく座り込んだ。
自分は……行けない。
いくらルイを助けたいと願っても、雨の中急斜面を下りていくなんて危なくて出来ない。
理性が邪魔をするのだ。
そして、回り道を探すなどする。
おそらく、アデルの思考もライラと同じで頭では違い道を探すべきだとわかっているだろう。
だが、アデルは進んだ。
ルイが自分へ向ける表情とアデルへ向ける表情の差が、そこにあるような気がした。