金色の師弟

威勢よく叫んだものの、アデルの肌を見ただけで頬を朱に染め、何も言えなくなる。

アデルは肩を竦めると、立ち上がり干しておいた上着に手を伸ばす。

「夜のうちに雨は止んだようだ。さっさと下山しよう」

「はい……」

アデルから目を逸らし頷くルイ。

それとも、このまま二人でどこかへ消えてしまおうか?

そんな言葉を、アデルは呑み込み、微笑を浮かべた。

アデルは心のどこかで、それもいいかと思っている自分に気付く。

だが、本心からは望めない。

ルイと同じに、アデルにも掛け替えのない主がいるのだから。
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