金色の師弟
戦場に持っていくものなのだから、傷付き汚れるのは当たり前だ。
だが、アデルの弓は小さな傷こそ多いが、いつも汚れはなかった。
唯一、戦闘を終えたその時だけ、アデルの弓は泥に塗れている。
武器だからといって手荒に扱うこともせず、丁寧に弓を手入れするアデルにルイは関心したものだった。
自分のように貧しい人間なら、物を長く使い続けようと丁寧に扱うかもしれない。
だが、アデルは貴族の長子。
壊したとしても、新しい弓を買うお金がないということはない。
どうして、そこまで大切にするのか。
その理由を、ルイはアデルに教えてもらったことがある。
「あの弓は、エルク様から頂いた弓なのでしょう!?」
「そうだな。……どうするか、ルイ。エルク様に謝る事を考えたら、帰りたくなくなってきたぞ」
いつもの調子でアデルは両腕を抱え身震いをしてみせる。
そんなに大切な物を無くしたというのにふざけた態度のアデルに、ルイはいろいろと言いたいことがあった。
が、何から言うべきかわからなかった。