金色の師弟

戦場に持っていくものなのだから、傷付き汚れるのは当たり前だ。

だが、アデルの弓は小さな傷こそ多いが、いつも汚れはなかった。

唯一、戦闘を終えたその時だけ、アデルの弓は泥に塗れている。

武器だからといって手荒に扱うこともせず、丁寧に弓を手入れするアデルにルイは関心したものだった。

自分のように貧しい人間なら、物を長く使い続けようと丁寧に扱うかもしれない。

だが、アデルは貴族の長子。

壊したとしても、新しい弓を買うお金がないということはない。

どうして、そこまで大切にするのか。

その理由を、ルイはアデルに教えてもらったことがある。

「あの弓は、エルク様から頂いた弓なのでしょう!?」

「そうだな。……どうするか、ルイ。エルク様に謝る事を考えたら、帰りたくなくなってきたぞ」

いつもの調子でアデルは両腕を抱え身震いをしてみせる。

そんなに大切な物を無くしたというのにふざけた態度のアデルに、ルイはいろいろと言いたいことがあった。

が、何から言うべきかわからなかった。
< 263 / 687 >

この作品をシェア

pagetop