金色の師弟

「今まで使っていたのはエルク様から騎士団入団祝いにと頂いた弓だ。それとは別に、俺にはもう一本、特別な弓がある」

初めて聞く話に、ルイはじっと耳を傾けた。

アデルが自らを語ることはそう多くない。

聞けば答えてくれるものの、自ら語るということは珍しいことである。

「俺の母はエルク様の父君、つまり前王の近衛騎士としてかなりの功績を残したんだ。前王は気さくな方でな、家臣たちともどこか友人のように付き合う方だった」

イアン様みたいにな、とアデルは笑う。

「あの方は弓の名手でな、俺も何度か見て頂いたことがある」

思わぬ言葉に、ルイは「え!」と声をあげた。

前王が弓の名手であったことは、噂で耳にしたことがある。

まさかアデルが直接手解きを受けていたとは予想外だった。

「まぁ、だから俺の実力の大半はあの方の教えがあってのものだ」

「凄いですね……」

「たまたまだ。たまたま俺の母が近衛騎士だったから俺に目が止まっただけのこと」

ただの偶然だ、とアデルは目を伏せた。
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