金色の師弟

そこでアデルは視線を上げると、前を見据えたままルイに問い掛ける。

「ザカルド様がご愛用なさった弓のことを知っているか?」

「はい。曇り無く輝く金色の弓。その矢の飛ぶこと、雷鳴の如し。常射必中の一撃はシェーダ国の未来を切り開く……ですよね?」

戦場に立つ前王ザカルドを表現する有名な比喩を、ルイは胸を張って答える。

よく知っているな、とアデルは微笑んだ。

まるで、父親を誉められて笑う子供のように。

「あの方はもともと、第三王子で王位を継ぐつもりなどなかったらしい。だから弓の修業に励まれ、金色の弓と共に戦場に赴く日々を送っていらしたんだ」

「そうだったのですか」

前王が第三王子であったことなどルイは知る由もなく、一種の伝説でもある弓使いの話を真剣に聞き入っている。
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