金色の師弟

ノルンの勘は、正しかった。

アデルにしても、ルイから避けられる理由はそれしかない。

告白をし、返事も聞かずにキスをした。

自分でも唐突過ぎたと思う。

ルイの気持ちも無視して、自分の想いを押しつけた。

相手がルイでなかったら、もっと上手く、罠に掛けるように自分に目を向けさせることが出来た気がする。

そんなことは当たり前だ。

好きでない相手になら、いくらでも計算が出来る。

アデルは深く溜め息を吐いて、頷いた。

「キスした」

「は?」

「え?」

端的なアデルの一言に、ディンとノルンは口をぽかんと開けたまま彼を見つめた。

アデルの言葉を理解するまでに数分を要した。

そして、先に口を開いたのはディンだ。

「……ルイに、か?」

「他に誰がいる」

眉をしかめ、疑り深い視線を向けるディンに、アデルは苦笑してみせた。
< 282 / 687 >

この作品をシェア

pagetop