金色の師弟

力任せに剣を振り回し薙払ったように見えるが、矢が跳んでくる時間は一秒にも満たない。

とっさに身体を動かし、的確に身を守ってみせたディンへと、周囲から感嘆の息が漏れる。

見物人の中の一人、イアンは腕を組みながら隣のルイへと尋ねた。

「ルイ、これはどちらを優勢と見る?」

「……アデルさん、でしょう」

ルイは二人から目を離さずに答えた。

否、離せないのだ。

同じ弓使いとして、アデルの動きはルイにとって見習うべきものである。
特に接近戦を不得手とするため、尚更に剣士であるディンとの勝負は目を離せない。

アデルは直接の指導以外でも、ルイへと様々なことを伝えようとしている。

そしてルイも、目を離さない。

言葉で教えてもらうだけが全てではない。

アデルはそのことを、態度で教えていた。
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