金色の師弟

二人は一定の距離を保ったまま走り続ける。

「いつまで逃げ回る気だ!アデル!!」

痺れを切らし叫ぶディンに、アデルは口元だけの笑みを送った。

それが挑発であることは、誰の目にも明らかである。

ディンは舌打ちをし、追うスピードを上げた。
アデルとの距離が次第に縮まり、もうすぐで剣の届く距離となる。

アデルの狙いはわからない。

だが、ディンに止まるという選択肢は初めからない。

「終わりだ、アデル!!」

ディンの咆哮を合図に、二人が動く。

地面を抉りながら、下からすくい上げるように斬り上げるディン。

そして、それを見越していたかのようにアデルは地を蹴り、修練場に障害物の一種として設置されていた不恰好な岩へと飛び移った。

ディンの切っ先がアデルの上着を掠めた。

だが、服だけを切り裂いた一撃は決定打とはならず、アデルは飛び乗ると思われた岩を蹴り、身体を宙へと浮かせた。
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