金色の師弟

ディンの頭を軽々と越える。

誰もがそのままディンの背後を取るのだと思い、息を飲む。
ディンもすぐさま振り上げた剣を身体へ引き寄せ、振り返った。

だが、地面に背中を向けていたアデルは空中で身を捩ると同時に弓を構え、矢をつがえたのだ。

「……なっ!」

まさか宙返りしながら弓を引くとは誰も思わなかった。

ディンは反射的に剣を盾に身体の前へ動かした。

だが、完全に予想外の空からの一射を防ぐには遅く、一本の矢が頬を掠めていた。

ディンが鋭い痛みに怯んだ。

その隙を見過ごすことなくアデルは着地すると、懐から短剣を取出し、ディンの首筋へぴったりと当てる。
< 35 / 687 >

この作品をシェア

pagetop