金色の師弟
朝からアデルと共に剣術の特訓をし、ルイは遅い昼食を取っているところだった。
混雑した時間帯を外したため、食堂は閑散としていた。
一人、少々冷めたパンを齧っていると、目の前で乱暴にトレイが置かれた。
ルイはびくりと肩を震わせ、トレイの主を見上げる。
「……」
感情を押し殺した金色の瞳が、黙ってルイを見つめている。
無言の圧力に、ルイはそっと目を逸らす。
隠すことなく不機嫌を撒き散らすアデルが、そこにいた。
「……逃げるな」
「逃げてない、です」
「嘘つけ。終わった瞬間に走りだしやがって」
「お腹が空いていたんです……」
そんな言い訳がアデルに通じるわけないとはわかっていたが、ルイはそう言って俯いた。
アデルを慕う気持ちと、イアンへの忠誠心。
混ざり合った二つの心は、ルイに逃走を唆す。
向かい合い、気持ちを話したい。
そうは決めたものの、実際にアデルを前にすると、何を言うべきかわからなくなってしまうのだ。