金色の師弟

留まっていれば、アデルがルイを昼食に誘うことは明らかだった。
だが、こうして後から追い付かれるのだから、結果としては同じだった。
アデルは強引に椅子を引くと、倒れこむように腰を下ろした。
木の椅子が軋むような音がしたが、アデルは気にも止めずにパンを手に取る。

目の前に座られては逃げられない。
自分のトレイを持って逃げてもいいが、ルイはそれが出来るほど図太い性格ではなかった。

「……」

「……」

眉間にしわを寄せ、端正な顔を歪ませるアデル。
静かな苛立ちがアデルを包み、それすらも洗練された空気のようにアデルを彩っている。
ルイは両手でパンを掴み、少しずつかじりながらアデルの様子を窺った。
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