金色の師弟
アデルはルイに手を掴まれると、にやりと笑った。
ルイはしまったと顔を歪める。
またしても、アデルの思い通りになってしまった。
「やっと、俺と向き合った」
掴んでいたはずの手は、いつのまにかアデルの手の中にあった。
ルイが引き寄せようとしても、アデルが離さない。
「しかし……食べ物で吊られるとは……」
アデルの呟きに、ルイは頬を染め俯いた。
これでは、食い意地の張った娘だ。
「そういえば、イアン様とミーナ姫の婚約は聞いたか?」
「あ、はい。城内を歩いていれば、自然と耳に入りますから」
婚約の話を耳にしたものは、嬉々として他の者に話をし、それを聞いた者もまた話をし……の繰り返しで、正式発表がされた正午ピッタリには、城の半数がその話を知っていた。
アデルは寂しげな微笑を浮かべ、ルイの手を握る力を強めた。
「アデルさん?」
「……」
微かに震えた指先。
ルイの視線を受け、アデルは何事もないように笑った。