金色の師弟
止まっていた空気が、意志を持って動きだす。
どっと歓声が響き渡った。
「勝負あり、だ」
「ぐ……!」
真正面から短剣を当てられ、ディンは目に見える程強く奥歯を噛んだ。
涼しい顔でアデルは短剣をしまうと、右手を差出し、目線で握手を求めた。
「……次は負けんぞ」
「前回と同じことを言うな」
眉をしかめ不機嫌な顔つきで伸ばされたディンの手を、アデルは力強く握り返し微笑を浮かべた。
二人の握手で、見物人たちの興奮は押し上げられる。
見応えのある手合せと友好的なアデルの態度が、メルディの人々には好ましいものであった。
「アデル将軍、さすがです!」
「ディン隊長、格好良かったです!俺たち、どこまでも付いていきます!」
メルディの兵もシェーダの兵も、口々に二人の名を叫んだ。
両者に対する様々な声の中に、非難するものは一つもない。
そういった他国でも温かく迎えることが、メルディの国柄である。
アデルはディンの手を離すと、振り返り人込みから一人の弟子の顔を探す。
だが、そう苦労することもなく見つかった。
鮮やかな金髪が目を引くことも原因だが、それ以上に瞳をきらきらと輝かせ真っすぐに見つめる瞳がアデルを呼んでいた。