金色の師弟

アデルはルイが目線を外しても、目を逸らさなかった。
痛いくらいの視線が、ルイの頬に突き刺さる。
耐え切れなくなり目を瞑ろうとしたとき、

「ルイちゃーん!」

背後から、誰かがルイを呼んだ。

「はい!」

ルイはアデルの手を振り払うと、立ち上がり振り返る。
黒で統一された落ち着きのある膝丈ほどのドレスに、フリルの付いた可愛らしいエプロンを付けた恰幅の良い女性が、小走りで走ってきていた。

「マリーンさん」

マリーンと呼ばれた女性はルイの元へとやってくると、ころりと小動物のような笑みを浮かべた。
彼女は四十歳手前のメイド長で、無垢な笑みと気さくな態度が愛されているオネスト城の人気者だ。
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