金色の師弟

イアンとミーナの婚約が発表された城下町では、婚約を喜ぶ歓喜の声が満ち溢れていた。
浮かれた市民たちの間を、馬の手綱を引くアデルとメモを手に辺りを見渡すルイが歩いていく。

「お嬢ちゃん、これ持ってきな!」

「え?」

「気にすんなって!今日はめでたい日だからな!」

歩いていたルイは、いきなり果物屋のおじさんから紙袋を押しつけられる。
おじさんはルイが受け取るのを確認すると、すぐに他の人に店先に置いてある紙袋を渡して回る。

「ありがとうございまーす!」

人混みに紛れたおじさんの背中に、ルイは手を振った。
町中の人全てが外へ出て喜びの声を上げているようで、前に進むにも苦労してしまう。

「ルイ」

不意にアデルがルイの名を呼び、肩を抱き寄せた。
小柄なルイは、放っておいたら人波にさらわれてしまう。
びくりとルイがアデルを見上げると、アデルは口角を吊り上げ、妖艶に微笑んだ。
< 366 / 687 >

この作品をシェア

pagetop