金色の師弟
駄目ではないが、と呟きアデルは再びどこかを見つめた。
「ルイ、少し待っていろ」
「え?」
「すぐ戻る」
そう言うと、アデルはすいすいと人波を潜り抜けどこかへ行ってしまった。
「え?アデルさん?」
ルイは必死に背伸びをし、遠ざかる黒髪を目で追った。
様々な人の頭に混じっても、艶のある黒髪はルイの目を引く。
嫌でも目に入るのだ。
途中で店に入ったのだが、距離があって何の店かまでは判別出来なかった。
(どうしたんだろう……?)
一人取り残され、ルイは心細くなる。
馬にぴったりと体をくっつけ、馬の首に頭を預けた。
「……アデルさん」
ルイは荷物に塞がる自分の手を見つめる。
先程の熱が戻ってくるようで、目を閉じた。
手を繋いで歩く。
それだけのことで舞い上がる自分に、ルイは限界を感じ始めた。
好きだという気持ちが溢れだしそうで、怖くなった。