金色の師弟
だから今、目一杯触れておこう。
後で後悔などないように。
アデルの気持ちは、ルイも同じだったようで、キスの最中にルイはアデルの背中に腕を回ししがみついてきた。
ルイはアデル程大人ではなく、恋愛経験も乏しい。
感じる不安はアデルの比ではないだろう。
アデルもベッドへと膝を乗せ、ルイの身体を抱き締める。
不安を全て拭い去ることが出来るとは思っていない。
それでも、少しでも減らしてやりたいのだ。
「ルイ」
唇を離し、アデルは愛しさを籠めてその名を呼ぶ。
「お前の不安を拭うために、俺に何をしてほしい?」
その言葉にルイは目を丸くし、照れ臭そうに微笑んだ。
「……アデルさんの本音を、ください」
嘘でもいい。
その考えが間違いだったことに、ルイは気付いた。
恋人という言葉に、距離はないのだ。
それを知ったルイだから。
嘘ではなくて、本音が欲しい。
「お前が好きだ。だから……死ぬな。絶対にだ」
アデルの瞳が不安に陰ったことを、ルイは見逃さなかった。
ルイは頷くと、アデルの胸に頭を押し当てた。
「私も好きです。だからアデルさんも、生きてくださいね」
生きてさえいれば、未来がやってくるかもしれない。
二人の恋の行方は、先の見えない未来へと委ねられたのだ。