金色の師弟

カトルは小さく笑みを零すと、からかうように首を傾げる。

「アデルさんは、相当ルイに生きてほしいみたいだね?」

言葉にしなくても、その想いは痛い程に伝わった。
相手の攻撃をかわし、受け流し、自分は一撃も食らわない。
反撃に転じたら、一撃で急所を突く。
防御に撤した戦い方。
言葉にすれば単純なことだが、実践するのは難しい。

少しでもルイの生き残る可能性を高めようとしたアデルの気持ちに、カトルは胸が苦しくなった。
本当はいつも傍で守ってあげたいと思っているだろうに。

カトルは耳を赤くし俯くルイに、眩しそうに目を細めた。
何かを聞いたわけではないが、オネスト遠征で二人に何か変化があったことはルイの纏う雰囲気の微妙な変化から察した。
笑顔が柔らかくなっていた。
愛を知った女性の笑顔、と表現したいが生憎カトルは男性で、この表現には自信が持てない。
だから、例えるならば母親のような柔らかな笑顔。
今まで見たことのない類の笑顔が、浮かぶようになったのだ。
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