金色の師弟
その笑顔に見惚れていた青年は、隣のカトルの視線に気付くと咳払いをして誤魔化した。
「さっきは凄かったよ。カトル相手に互角だもんな」
青年騎士の言葉に、ルイは首を振る。
「いえ、カトルさんが手加減をしてくださっただけです」
それは事実であったがカトルは頷くことはせず、黙って微笑んだ。
ふぅん、と青年騎士は両手を組んで頭の後ろに回す。
「剣術も漆黒の風から教わったのか?」
「はい」
「……すげぇなぁ。万能じゃん」
漆黒の風、というのはもちろんアデルのことで、それは以前の彼の通り名である。
ルイが小さく笑ったことで、青年騎士も自分の間違いに気付いて声を上げた。
「あ、今は『金色の風』か」
「はい」
穏やかな笑い声が、風に吹かれて舞い上がる。
目の前にはいない最愛の人へ向けられたルイの笑顔に、今度はカトルも目を奪われてしまった。