金色の師弟
危険であることは承知の上で、ライラは自分の意志を貫いた。
それから、一度も連絡のなかった彼がようやく帰ってきた。
イアンは安堵に頬を緩め、兵士へと早口になりながらライラを呼ぶように命じた。
「ライラが……!すぐに通してくれ。あぁ、場所はここでいいから」
命令を受けた兵士が口を開くより速く、ふわりとなびいたマントがイアンの視界を掠めた。
深緑の髪を持つ不遜な少年は、変わらぬ姿で無愛想にイアンの目の前に立つ。
「もう、来た」
必要以上に物を言わないその姿勢も変わらない。
相変わらずのぶっきらぼうな物言いに、イアンはくすくすと笑みを零した。
「元気そうでなによりだ、ライラ」
「当たり前だ」
「無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」
「帰ってくるに決まってる。そうでなければ潜入の意味がないだろ」
敬意を払わぬライラの口調に兵士は頭を下げたまま、眉をしかめる。
だが、ライラが国のために危険を冒して潜入調査をしてきたことは事実なため、はっきりと文句を言うことは出来なかった。