金色の師弟
兵士の背を追っていた柔らかな視線をきつく引き締め、イアンは挑むようにライラを見つめた。
ライラは一度だけ頷くと、開け放たれたままの扉を閉じて机へと歩み寄る。
立ち上がったイアンはそのまま机の上に散乱した書類やペンなどをどかし、中央にスペースを作る。
ライラは懐から丸められた紙を取り出すと、机上に広げる。
それは、デモンドの地図であった。
いくつかの地名の上には丸がついており、中央に位置する都市には二重丸が付けられていた。
「ここが、王都」
ライラが、二重丸を指差した。
その指が地名上を滑り、デモンド西に点在する一つの丸へと移動した。
「この丸は、兵達が駐留している町だ」
「……え!」
ライラの言葉に、イアンは驚愕を隠し切れずに口元を手で覆った。
「これ、デモンドとメルディ、オネストの国境沿いの町ほとんどじゃないか……」
地図上の西に位置する町名に対し、丸が付いているものはおよそ八割。
それが意味するものは何か。
わからぬほど、イアンも愚かではなかった。