金色の師弟

(まぁ、税が上がったのは俺にも責任があるか)

ノルダ砦へ提供する食料を確保するための増税であるのだから、責任の一端はアデルにある。
だが、十分な備蓄もなしに侵攻を始めたことに一番問題があると思っているアデルは、そこまで責められてやるつもりはない。

(エルク様……)

王都に呼び戻されるのは、計算のうちだ。
何としても、エルクから直接話を聞いてみせる。
話をすれば、考え直してもらえるだろうか。
侵攻を止めさせる説得が出来なければ、アデルにも考えがある。

「どちらも、守ってみせる……」

月に祈るように、アデルは頭を下げて椅子にもたれかかった。
無謀でも、理想でもない。
やるしかないのだ。
二つの大切なものを守るために。

夜風が吹き荒れ、森が騒めく。
金色の風が吹く日は、近い。
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