金色の師弟
ライラは考えを払うように首を振る。
「ノルダ砦を制圧するやり方も鮮やかだ」
「私には戦略というものはよくわかりませんが、どうなのですか?」
素直に尋ねたルイに、ライラは微かに嬉しそうに肩を竦めた。
だが、今からアデルの称賛をせねばならないと気付き大袈裟に溜め息を吐いた。
「ライラ……?」
「気にするな」
大層腹立たしげに答えて、ライラは腕を組んだ。
ルイと同じ色をした美しい空を見上げ、ライラは考えを纏め始める。
城内のアデルの策に対する評価は、そう高くなかった。
なぜなら、ノルダ砦はシェーダからは攻めやすい立地だったからだ。
「馬鹿な隊長どもは『シェーダ軍ならばノルダ砦を落とすのは誰でも出来る』などと口にしていたが、それは違う」
ノルダ砦を落とされた精神的不安を解消するために、アデルを馬鹿にしているのだろうことは予測出来る。
だが、ライラにとっては彼らの言葉は情けないものでしかない。
「そもそも、アデルの行動の速さこそが脅威だ」
「速さですか?」
「速過ぎるとは思わなかったか?」
ライラに問われ、ルイは首を傾げる。
そもそも彼女には、どこからが速いでどこからが遅いかの判別が付かなかった。