金色の師弟
厳しさを兼ねた瞳には冷たさのみが宿っている。
(……これは、誰だ)
目の前にいる王は、誰だ?
今アデルの前にいるのは、ずっと見守ってきたエルクではない。
顔も、声も、漆黒の髪も、いつもと変わらぬエルクなのに。
美しく澄んだ黒い瞳が、敵意に淀んでいるのだ。
「先に同盟を裏切ったのはあちらだろう?遠慮する必要があるのか?」
「……!」
酷薄な笑みを浮かべたエルクは、平然と言い放った。
厳しいのではなく、冷たいだけの王に、アデルは背筋を凍らせる。
「……ともかく、私は後のことを考えメルディ軍に不用意な被害を与えずに進軍することは出来ないと思います。さらに、メルディ国に深く進軍していくほどの蓄えが、この国にはあるのですか?」
「そうだな、それは問題だ」
エルクは大きく頷いた。
これで諦めてくれればいい。
現状では実際に進軍は厳しいのだ。
それに今ならまだ、和解が出来る。
長々と戦いを続け、他国に隙を見せることもない。
無益な戦いは、早期に終わらせるべきなのだ。