金色の師弟
長い時間を掛けてようやく解放されたアデルは、出撃の命が下されるまで待機となった。
王座の間を後にしたアデルはその足で、町へと出ていった。
普段なら時間を問わず活気に溢れる城下町が、静まり返っている。
今のような夕暮れ時は特に、酒場の呼び込みで賑わうというのに。
元気が売りの酒場の娘たちも、通行人がいなければ意味がないと店内に籠もってしまっている。
(増税が響いているな……)
王都でこれだ。
地方となったら、もっとひどいだろう。
戦が長引けば、疲弊するのはシェーダの国民も同じ。
(エルク様……目を醒ましてください……!)
アデルは拳を握り締め、空いている手で酒屋の扉を押した。
からん、と控えめに響いたベルの音に、若い娘の店員が反応した。
「いらっしゃいませ!」
娘に軽く微笑み、アデルは店内を見渡した。
そして、隅の席に座る見知った栗色の頭を見付け近づいた。