金色の師弟
注文の品が届き、アデルが食事を始める姿を見届けると、ノルンは狭いテーブルに身を乗り出した。
「わかったわ。エルク様にメルディとデモンドが手を組んだなんて馬鹿げた嘘を持ち込んだ人間が」
アデルは食事の手を止めず、ベーグルサンドに噛り付いた。
貴族とは思えぬ豪快な食べっぷりは、騎士として遠征が多かったことが原因だろう。
「物的証拠はないけれど、私たちの小隊長のクトラよ」
口の中にあるものを飲み込み、アデルはベーグルサンドを皿の上へと戻す。
ソースの付いた指を舐め、眉を潜める。
「志願兵から出世したクトラだな?……そういえば、奴は随分と騎士団長に推されていたな」
「クトラがデモンドと内通していることもわかったわ」
「内通だと?」
「えぇ。クトラ・マイシェン。シェーダ国内のザガの町で生まれ、山賊により親を失ったとあるけれど、彼が証言した年に、ザガに賊が出たという記録はないわ」
念のためザガの町で聞き込みをしたが、やはり賊などなかったと言う。