金色の師弟
ノルンは水の入ったコップを手に取り、口を付けた。
からからと氷が水の中で踊り合う。
冷たい水で喉を潤したノルンは、両手の指を組みその上に顎を乗せた。
「詰めが甘いわよね?潜入するなら徹底的にやらなくちゃ」
ノルンは悪戯に微笑む。
彼女に掛かれば、掴めない事はない。
「すでにデモンドからの密偵が数名王都に入り込んでいるようで、彼らがクトラと接触しているのを確認したわ」
「その密偵はどうやって見つけたんだ」
「半年以内に王都にやってきた人を宿で調べて、中から娼館や酒場で働いている人を選んで、詳しく調べるの」
その中で怪しかった者に、接触したという。
「私たちの店の酒場に二人怪しい人がいたから、そいつらを娼館に連れていくのよ」
店長が、王都の娘は美人が多いなどと言えば、密偵といえども人間。
興味は湧くだろう。
「もちろん、娼館も私たちの手の中よ?」
綺麗な薔薇には刺がある。
ノルンと話をしていると、アデルはよくその言葉を思い出す。