金色の師弟
本当に、自身の迂闊さを呪いたい。
オネストから帰った自分がすべきことは、国力増加よりもエルクの支えとなることだったのに。
エルクなら大丈夫だ。
そう思ってしまった自分がいた。
実際、エルクならば立ち直ることは可能だったろう。
だが、そのためにはエルクが家族のように慕うアデルの存在は必要不可欠であり、時間もそれなりに掛ける必要があった。
「クトラへ送られた指示もいくつか入手したわ」
ノルンはテーブルの上に薄い紙束を置いた。
何気なく手を伸ばし、アデルは軽く目を通す。
「……二ヵ月前のオネストの山賊は、やはりこいつらの仕業か」
アデルは手を止め、不敵な笑みを浮かべる。
頷いたノルンも、どこか可笑しそうに笑っていた。
「貴方、要注意人物のようね」
「全くだ。……たく、好かれるのは女性相手で十分だ」
軽口を叩きながら、アデルはクトラに送られていた指示を目で追った。
山賊討伐に乗じて、シェーダ軍の実力者を亡き者にせよ。
特に弓騎士アデルは最優先に狙うこと。
ご丁寧に名指しで実力者に数えられても、アデルには迷惑でしかない。