金色の師弟

そうやって、エルクから渡された志願兵に関する全面的な指揮権。
それを手に、アデルは平民にも等しく出世のチャンスを与えた。
それにより危機感を覚え、鍛練を始める貴族の騎士も増えた。
そこまでは、アデルの狙い通りであった。

内側から国を変える。
ゆっくりと、時間を掛けて。

ルイには申し訳ない話だが、当分は会えないだろうと思っていた。
何かを変えるときに短時間で出来るわけなどなく、忙しくなることも目に見えていたからだ。
会いたいと、何度も思った。
夜中に一人空を見上げ、こっそりと屋敷を抜け出してしまおうと思ったこともあった。

思い止まったのは、ルイとは違う大切な人を想ったから。
エルクのためだと思えば、自分の欲は我慢出来た。

もしもルイが会えなかったことを責めるなら、その時は大人しく謝るつもりだ。
泣かれたら……少し、困る。
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