金色の師弟

エルクのため、シェーダ国のためにと身を削っていたことが実を結ばなかったことを、残念に思っている暇はない。

アデルはカップを置く。
そして、正面のノルンへと金色の瞳を向けた。

「ノルン、お前には十分助けられた。感謝している」

軽く頭を下げたアデルに対し、ノルンは訝しむような視線を送った。
いつも不遜なこの男。
素直に礼を述べる姿に、嫌な予感がした。

「もう十分だ。しばらくお前は俺から距離を置け」

冷たく突き放すアデルの声と瞳に、ノルンの胸の奥がかっと熱くなる。
利用するだけしておいて、必要がなくなったらどこかへ行け。
なんという言い様だろう。

(……違う。アデルはまた一人で何かしようとしている)

今までノルンに協力を仰いでいたのは、情報収集のため。
彼の計画に関わらせる気は、微塵もなかったのだ。

いつもいつも、わかったような顔をして、一人で何でも背負おうとする、
そんな彼が腹立たしくて……心配だった。
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