金色の師弟

「お前とは付き合いが長いからな。裏切られるとは思わない。が、タクトが絡めば話は別だ。わかるだろう?」

ノルンのタクトへの恋心を知っている者は多くはない。
だが、ノルンの両親は薄々感付いているのだ。
ノルンがアデルに協力しても、両親がノルンの気持ちを上に教えれば、悪用されるだろう。

顔を上げないノルンに焦れて、アデルはふんわりとした栗色の頭を軽く撫でた。

「俺だって、ルイを人質に取られたらどうなるかわからない」

それが、普通だ。
そう言ってアデルは微笑んだ。
人を巻き込まないようにと、あえて人を遠ざけるアデルの優しさが、ノルンには痛かった。

そして、ノルンは僅かながらアデルの考えを察する。
今やアデルの存在は、増税や戦争で不安だらけの民たちの信頼を支える柱。
だから上も不用意に排除出来ない。
だが、アデルが明確に敵へ回ればどうだろうか。
シェーダ軍としては、アデルを殺す大義名分が存在することとなるのだ。
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