金色の師弟

母の功績が残した邸宅の扉に手を掛けるのと、その扉が前触れもなしに内側に開かれたのは同時だった。

「……!」

「あ、おかえりなさい、アデル隊長」

邸宅から現れたのは、アデルが制圧軍に参加している間、屋敷の留守を任せた部下のルークであった。
志願兵達の宿舎の建設を急いでいるのだが、まだ完成には遠い。
彼らのような志願兵の中には王都内に住む家を持たない者が多く、いくらかは政府負担で城下町の宿に暮らしている。

ルークも、そんな志願兵の一人であり、いくらかは自己負担で寝泊りをしなければいけないのなら俺のところへ来るか、とアデルが声を掛けたのだ。
代わりに、留守にする間の掃除や、忍び込む者に対する見張りとして働いてもらっていたのだが。

幸い、大き過ぎない邸宅でもアデル一人で住むには広すぎたので、他に何人か住まわせても問題はなかった。
アデルが帰ってきてからも、ルークの家事能力が予想以上に高かったため、そのまましばらく住まわせることにしたのだ。
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